心悸は、虚証と実証とに大別される。
1. 虚証の心悸の弁証論治
(1)心気虚による心悸
[主な症状]
心悸が動くと増悪
[随伴症状]
自汗、脱力感
[舌、脈]
舌淡、脈弱
[証の分析]
心気虚のため、血液の循環を促進する力が弱いので、心悸が出現する。動くと気が消耗するので、心悸がひどくなるわけである。気虚で汗をコントロールできないため、自汗が出る。同様に、脱力感は気虚による。舌淡と脈弱は心気虚で血行機能が弱くなったことによる。
[治療方針]
心気を補い、心神を安定させる。
(2)心陽虚による心悸
[主な症状]
心悸、胸痛、手足の冷え
[随伴症状]
面色白(心気虚の症状も伴う)
[舌、脈]
舌淡、脈沈遅弱
[証の分析]
心陽虚で心を温められないため、心悸がある。また、陽気で虚寒によって血管が縮み、血行が影響されたため、胸痛、面白、舌淡、脈沈遅弱になる。手足が温められないため冷える。
心陽虚は、心気虚から進展してきたものが多いため、心気虚の症状を伴うのは普通である。さらに、胸痛、手足の冷え、面白、脈沈遅などの虚寒の症状が見られるのは、心陽虚による心悸の特徴である。
[治療方針]
心陽を温補して、心神を安定させる。
(3)心血虚による心悸
[ 主な症状 ]
心悸、眩暈、面部無沢
[ 随伴症状 ]
失眠、多夢、健忘、唇淡白
[ 舌、脈 ]
舌淡、脈細
[ 証の分析 ]
心血虚で、心を十分養えないため、心の機能が弱くなり、心悸が出る。血虚で心神を十分養えなくなり、眩暈が出る。また、脈を満たせず、面唇舌などが淡白となり、脈は細である。
[ 治療方針 ]
心血を養い、心神を安定させる。
(4)心陰虚による心悸
[ 主な症状 ]
心悸、心煩、
[ 随伴症状 ]
ほほが紅い、手足がほてる、潮熱、寝汗(心血虚の症状も伴う)
[ 舌、脈 ]
舌紅、苔少、脈細数
[ 証の分析 ]
心陰虚で心神を撹乱して、心悸、心煩が出る。陰虚で脳を養えず、眩暈がある。虚熱が出てほほが紅い、手足掌の熱、潮熱、寝汗、舌紅、無苔、脈細数が出るからである。
心陰虚は心血虚から進展してきたものが多い。そのため、心陰虚と心血虚には皆、血の滋養不足の症状が出るわけである。しかし、更に虚熱の症状がみられるのは心陰虚の特徴である。
[ 治療方針 ]
滋陰、養心安神
2.実証の心悸の弁証論治
(1)心血お阻による心悸
[ 主な症状 ]
心悸、胸悶、針刺様痛
[ 随伴症状 ]
唇紫暗
[ 舌、脈 ]
舌に紫暗の点、或いは斑がある。脈渋、結代
[ 証の分析 ]
心脈に C 血があり、心が血の栄養を十分もらえないため、心悸が出る。脈絡が通じないため、針刺様の胸痛が出る。唇、舌の紫暗斑、点、及び脈の渋、結代は C 血によるのである。
(2)水飲内停による心悸
[ 主な症状 ]
心悸、下半身水腫
[ 随伴症状 ]
眩暈、胸悶、はきけ、小便不利
[ 舌、脈 ]
舌苔白膩、脈弦滑
[ 証の分析 ]
水飲は体内に停留して心を凌ぎ、心悸を起こす。水が気機を阻んで陽気が昇らないため、眩暈が出る。胸の陽気が阻まれて、胸悶が出る。下半身の水腫、はきけ、小便不利、舌苔白、脈弦滑などはみな水飲内停による。
[ 治療方針 ]
温化水飲、心陽を補う
(3) 痰火撹心による心悸
[ 主な症状 ]
心悸、易怒、煩燥、痰多
[ 随伴症状 ]
失眠、胸悶、口苦、尿黄、便秘
[ 舌、脈 ]
舌苔黄膩、脈滑数
[ 証の分析 ]
痰火が心を撹乱して心神が安定できないため、心悸、易怒、失眠、煩燥が出る。痰火が体内に結ばれることによって、痰多、胸悶、口苦、尿黄、便秘、苔黄、脈滑数などが見られる。
[ 治療方針 ]
清熱化痰、安神
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