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 感冒という疾患に対しては、西洋医学ではウイルスによるものと考えられるが、中医学では、こればかり考えてはいない。つまり、ウイルスはあっても、感冒になる人とならない人がある。又は、天気、気温が急に変わるときに、風邪にかかり易いなどを含めて考えてみると、感冒という疾患は、自然の変化と体質に関連することと考える。つまり、体と自然のバランスをとれば、感冒にはかからない。逆に体と自然のバランスを崩せば感冒になり易い。自然の原因としては、少なくとも、風、寒、(暑)熱、湿、燥などがとりあげられる。体には防病能力がある。それがくずれる場合、虚というのであるが、中には気虚、陽虚、血虚、陰虚の区別がある。自然の風、寒、(暑)熱、湿、燥の邪気で起こった感冒では、実証という。その時、体の抵抗力が十分あるので、反応は強い。治療する場合、体の抵抗力を補助しないでも邪気を除けば、バランスを回復できるので、瀉法を使う。しかし、体質の弱いことで起こった感冒は、邪気を除くだけでなく、体の気血陰陽不足の部分を補助しないと完治にならないので、補法も必要である。臨床では患者の体質及び感受した邪が違うので、正しい治療方針の確立と処方の前提は、患者の体質と感受した邪の種類の明別である。つまり、弁証である。
感冒には、外邪による実証(体質は弱くない)、と体質が弱い上に外邪を受ける虚証(実を兼ねる)に大別する。
実証には、外邪の種類により、風寒感冒、風熱感冒、暑湿感冒、風寒湿感冒、燥熱感冒などがある。いずれも、外邪の侵入を原因とするので、侵入した外邪を排除すれば、バランスが回復されて治る。なお、初期の段階は邪気が皮膚と口、鼻より侵入し、表と肺に影響を与えて表証を示す。外邪を排除する方法では、発汗を選択すべきで、もし誤って瀉下法と補法などを使用すれば外邪を体内に深入させ、或いは正気を消耗する可能性が強く、治らないどころか病気が複雑になる場合が多い。
虚証には、気虚感冒、陽虚感冒、血虚感冒、陰虚感冒などがある。いずれも正気の不足が原因なので、正気の補助は治療の中心である。もし誤って正気を補助しないで瀉法、過度の発汗などを使ったら、正気を更に消耗する恐れがあり、病気がひどくなる場合が多い。

(1) 風寒感冒
[感受した邪]
風寒の邪
[症状]
悪寒、微発熱、頭身痛、無汗、鼻づまり、白い鼻汁
[舌脈]
舌苔薄白、脈浮緊
[中医学の考え]
風寒の邪は体に侵入し、衛気が抑えられ、悪寒の症状を起こし、風寒の邪は筋脈を縮めて、頭身痛が出る。衛気は抑えられるので、汗は出ない。鼻は肺の窓で、皮膚より入った風寒の邪が肺に侵入したので、鼻もつまり、白い鼻汁も出る。舌苔の薄白と脈の浮緊風寒の邪は体表にあることを示す。
[治療方針]
辛温解表(辛のものは発汗作用をもつ、邪を汗から除く。温のものは寒邪を除くことができる。辛温のものは体表より寒邪を出す力をもつので、解表の作用がある。)

(2) 風熱感冒
[感受した邪]
風熱の邪
[症状]
発熱、微悪寒、喉赤く痛い、咳して黄色痰、黄色い粘稠の鼻汁
[舌脈]
舌苔薄黄、脈浮数
[中医学の考え]
風寒の邪が体に侵入し、発熱がある。肺の宣発の機能を邪魔し、咳が出る。熱邪によるものだから喉が赤く、痰と鼻汁は黄色である。舌苔の薄黄と脈の浮数は風熱の邪は表にあることを示す。
[治療方法]
辛涼解表(辛のものは解表の作用がある。涼のものが温邪を除く)

(3) 暑湿感冒
[感受した邪]
暑湿の邪
[症状]
発熱、頭重、脱力感、心煩、口渇、胸悶、尿赤、吐き気、咳して痰黄粘稠、黄色粘稠の鼻汁
[舌脈]
舌紅苔薄黄膩、脈濡数
[中医学の考え]
暑湿の邪が体表を侵入、微熱が出てくる。湿邪は粘滞、重濁で、感受することにより、頭、体が重く脱力感を来す。肺に侵入し、気の巡りに影響して、胸悶がでる。脾にも影響して、痰湿が出て、黄色粘稠の痰が多量に出る。鼻汁も黄色粘稠、舌紅苔膩などである。
[治療方針]
清暑去湿解表

(4) 風寒湿感冒
[感受した邪]
風寒湿の邪
[症状]
頭体が重く、痛い。微悪寒発熱
[舌脈]
舌淡苔白膩、脈浮
[中医学の考え]
風寒湿の邪は体に侵入し、経絡、筋肉、関節などのところに停滞し、気血の巡りに影響を与えて、微悪寒発熱の他に、頭と体が重く痛いなどを引き起こす。
[治療方針]
去風寒湿

(5) 燥熱感冒
[感受した邪]
燥熱の邪
[症状]
発熱、頭痛、口渇、乾咳、無痰
[舌脈]
舌紅苔白乾、脈浮数
[中医学の考え]
温燥、燥熱の邪気が体に侵入し、肺を傷め、津液を消耗するので、乾燥の症状を起こす。

(1) 気虚感冒
[不足のもの]

[症状]
悪寒発熱、頭痛、鼻づまりの他に、脱力感がひどい。
[舌脈]
舌淡白苔白、脈浮無力
[中医学の考え]
気の不足で、脱力感と脈無力が現れる。更に、外邪を感受すれば上述した症状を呈する。
[治療方針]
益気解表

(2) 血虚の感冒
[不足のもの]

[症状]
頭痛、微悪寒、面唇の色は淡白で、光沢なし、めまい、心動悸
[舌脈]
舌淡白、苔なし、脈細
[中医学の考え]
血虚で面唇などを養うことができなくて、淡白色と光沢感はないわけである。
頭を養えないからめまい、心を養えないから心動悸、脈管を充満できないから脈細などが現れる。頭痛と微悪寒は感冒の症状である。
[治療方針]
養血解表

(3) 陽虚の感冒
[不足のもの]

[症状]
悪寒、手足の冷え、頭身痛
[舌脈]
舌淡、苔薄白、脈沈無力
[中医学の考え]
陽虚で、体を温める力は弱くなり、手足が冷え、悪感が出るわけである。
[治療方針]
助陽解表

(4) 陰虚の感冒
[不足のもの]

[症状]
頭痛、微悪風寒、手足のほてり、口渇、乾燥した咳、痰は少ない。
[舌脈]
舌紅、無苔、脈細数
[中医学の考え]
陰虚で陽を抑えることができなくなって、手足がほてる、口渇、乾燥した咳、舌紅、無苔、脈細数などが現れる。更に、外邪を受けて、頭痛と微悪寒が出現する。
[治療方針]
滋陰解表


感冒の初期は上述した方法で弁証して治療するが、もし平素ストレスがたまっている人であれば、行気解表で治療すべきである。香蘇散を使うのが一般である(香附子、紫蘇葉、陳皮、甘草)。しかし、感冒は早期の正しい治療を受けない場合は、さまざまな変化が出る。例えば、発熱が高くなり、悪寒はなくなった。同時に面赤、汗が出て、口渇、脈が洪数の症状も伴うならば、邪気は陽明経に入ったという判断をし、白虎湯で治療する。もし、脱力感、汗がもっと出て、口渇がひとい場合であれば、白虎加人参湯で治療する。もし、悪寒と発熱が繰り返し出るとすると、邪気が半表半裏の少陽経に入ったという判断をし、小柴胡湯の症状の上に、もし、便秘が出れば、大柴胡湯を使用する。
感冒という疾患は、邪受した邪気の種類により、人の体質により、さまざまな表現が出てくる。邪受した邪気の種類と人の体質を正しく弁証できれば、その回復する方法の選択に便利になり、より良い治療効果をとれる。更に感冒の発展をうまく予想し、早期に予防すれば、感冒による合併症を予防できる。感冒の後期に、体の津液は発熱と発汗により消耗され、津液不足か、或いは陰虚に陥る人が多い、例え熱が下がっても、完治とはいえない。その不足の津液を補助することは大事なことであり、一般には、麦門冬湯を一週間ぐらい投与すれば、体質の回復に有益である。

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